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富山の薬と膏薬、生薬のにおい

            続・においの記憶(6)         ☆富山の薬と膏薬、生薬のにおい 越中富山の薬売り、毎年冬になると訪ねてきたものだった(註1)。 玄関口で挨拶をして背中に背負っていた大きな長方形の藍色の風呂敷包みを板の間におろす。そしていろりのわきに座り、私たち子どもに真四角に折ってある小さな紙袋のようなものをお土産にくれる。その真ん中に小さな丸い穴が開いていてそこに口をつけて息を吹き込む...

家の中のいい匂い

            続・においの記憶(5)            ☆家の中のいい匂い《青畳》 本章の最初の節で述べた干し草以上にいい匂いなのが青畳だ。新しい畳の、あるいは何年かに一度表替えをした後の畳表の淡い青緑色のイグサの発する芳香、これはたまらない。しかし、日にちがたつにつれ畳の色は黄色くなり、いい匂いはうすれていく。これが寂しい。できたら毎年畳替え、と言いたいところだが、貧乏人は悲しいもの、...

季節の行事のにおい

            続・においの記憶(4)           ☆季節の行事のにおい 本稿の第一部で私たちの幼いころの季節の行事について述べているが(註)、ここではそれをにおいとのかかわりで述べてみる。《正月》 餅つきのために大きな釜でふかしたもち米の匂い、普通の米を炊いたときの匂いとはまた違い、これはこれで独特のいい匂いがする。 餅をつく前にその一部を茶碗に盛ってもらい、それをおにぎりにし、塩をま...

夏の夜のにおい

            続・においの記憶(3)            ☆夏の夜のにおい 山形内陸の夏は暑い。前にも述べたが、かつては日本の最高気温の記録を持っていた。 しかし、夜は涼しい。朝方などは寒いくらいで、掛け布団も必要となる。 この一息つく夜、困りものは蚊だ。でも、それには蚊帳があった。 さきほど述べたトマトもぎ等の収穫や荷造り等々の農作業が終り、夕食をとつて一休み、入浴をして、布団を敷く。こ...

真夏の太陽のにおい

            続・においの記憶(2)           ☆真夏の太陽のにおい 干し草はおてんとさまの匂いと前回の記事で書いたが、それは「太陽のにおい」「真夏のにおい」と言い替えることもできる。しかし、真夏といえば、太陽と言えば、ギラギラとした印象がある。一方、干し草のにおいはそんなきつい印象ではなく甘くやわらかい。それで、干し草はやはり「おてんとさまの匂い」と優しく言いたい。  「真夏のに...

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プロフィール

酒井惇一

Author:酒井惇一
元・東北大学農学部教授
元・東京農業大学生物産業学部教授
現・東北大学名誉教授

 本稿は、昭和初期から現在までの4分の3世紀にわたる東北の農業・農村の変化の過程を、私が農家の子どもとして体験し、考えたこと、また農業経営研究者となってからの調査研究で見、聞き、感じたことを中心に、記録したものである。

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