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判読・旧字旧仮名遣いの作文帖



          参考・明治末期の小学生の作文帖と作文教育(2)

           ☆判読・旧字旧仮名遣いで書かれた「作文」帖

 以下の文は、前回紹介した「作文」帖iに毛筆で書かれた文を私なりに判読してみたものである。なお、①、②………⑲の数字は前回の記事で私がつけた「作文」帖の頁番号である。

****
 ①  紀元節
   紀元節ハ二月十一日
   ニシテ神武天皇ガ天
   子ノ御位ニツカセ賜ヒ
   シ日ナリ。
    菓子をおくる文
   菓子一箱差上申候。
    櫻
 ② 櫻ハ四月頃花開キ甚
   ダ美シキモノナリ。
   今日ハよき天氣に
   御座(※1)候。
    日本の形
   我ガ日本帝國ノ形ハ
   東北ヨリ西南ニツラナレ
   ル四ッツノ嶋ヨリナレルナリ。
 ③  錦繪をおくる文
   此の錦繪東京より
   もらひ候に付三枚差上
   申候。
    品物をおくられたる
    れい文
   新茶澤山いただき
   有りがたく存候。
 ④  海草
   海草ニハ海苔昆布ナ
   ドアリテ風味ヨク養
   ヒ多シ。
    支那人
   支那人ハヒモノ如クアミ
   タル長キカミノ毛ヲタレタ
   リ。
    日本人
   日本人ハ髪ノ毛ミ
 ⑤ ジカクハサミ常に角
   袖ノ衣(※2)キモノヲキテ
   居ルナリ。
    祭礼二友ヲ招ク文
   明後日當町八幡神
   社ノ祭礼ニ付キ午後二
   時より御出下され度
   候。
 ⑥ 明朝學校二御同伴致度候。
   明日ハけい馬見に御同伴致兼候。
    軍艦
   軍艦ハ其ノ名ノ如ク
   軍二用フル船ニシテ大
   テイ鐵ニテ作リ何レ
 ⑦ モ大砲ヲバ(※3)ソナヘタリ。
    茶碗注文の件
   伊萬里やきの茶碗
   十人前入用に付七月五
   日まで御届け下され度
   候。
    習字帖を借る文
   習字帖第三調べたき
   字これあり候ニ付二三日
 ⑧ 拝借致度候
    讀本を借用する
    文
   小學讀本巻の六
   何卒御貸し下さ
   れ度候。
 ⑨  蠶
   蠶ハ桑ノ葉ヲ食
   ヒテ成長スレバ口ヨリ
   糸ヲ出シテ身ヲツヽ
   ム之ヲ繭トイフ其
   ノマユヲ煮テ生絲ヲ
   製スルナリ。
    虎
   虎ハ猫ニ似テ大キク毛色
   ハ黄色ニ、し(※4)ノ字ノ黒
 ⑩  キ模様アリ力強ク心
   タケクシテ獸ノ中ノ
   大將ナリ。
    加藤清正
   加藤清正ハ豐臣
   秀吉ノ臣ニシテ朝
   鮮征伐ノ時虎ヲ
   コロセシホドノ勇士ナ
 ⑪ リキ。
    稲刈の手傳を頼む文
   明日より稲刈初め
   度候へとも手不足
   にて困り候間二三日
   御手傳下され度候。
    武内宿襧
   武内宿襧ハ武勇人ニ
   スグレ忠義ニアツク
 ⑫ シテ名高キ長命ノ
   人ナリキ。
    病氣見舞の文
   他より承り候處御
   病氣の由昨今は如何
   に候哉此品そまつに候
   へとも御見舞の志る
   しまて進上致候。
    同返事
 ⑬ 昨日は御見舞いなし
   下され其の上何より
   の品いたゞき有りがた
   く御礼申上げ候病氣も
   昨今は大いによく相成
   申候。
    空氣
   空氣ハ色モナク臭モナ
   キモノナレド人ヲ初メ
 ⑭ 草木鳥獸ナドアラ
   ユル生物ハコレヲ吸ヒテ
   命ヲタモツ風モスナ
   ハチ空氣ノ動ケルモ
   ノナリ。
    楠正成
   楠正成ハ後醍醐天皇
   ノ御代ニ足利尊氏ト
   攝津の湊河ニテ花々
 ⑮ シク戰ヒツヒニ討死シタ
   ル忠勇ノ大將ナリキ。

      (白紙)


 ⑯  鹽を注文する文
   赤穂鹽五升入用に
   付明後日午前十時まで
   マチガヒなく御届け下さ
   れ度候也。
 ⑰  寒中見舞の文
   拝啓寒中とは申ながら
   思の外寒さ強く候処貴君
   如何に候哉御伺ひ申上申
   也
    井上でん女
   井上でん女ハ筑後ノ國久留米
   ノ人ニシテ十二三歳ノ時ヨリ
   業ヲハゲミツヒニ一國ノ物
   産トナレル久留米飛白ヲ
   織出シタル程ノ女ナリキ。
    五港 
 ⑱ 海水弓ナリニマガリテ陸
   地に入込ミ船ノ出入ニ便
   利ナル處ヲ港トイヒ横
   濱神戸長崎新潟函
   館ハ我國ノ五港トイフ
   ナリ。
    寒中見舞の返書
   拝啓昨日は寒中の御見舞
   を下されて有りがたく候私(※5)
   初め家内一同変りなく
 ⑲ 暮し居り候に付恐れなが
   ら御安心下され度候也。
    欠席届
       私儀
   本月廿三日ヨリ廿八日マテ
   六日間上山ヘ湯治ニ参リ
   候ニ付欠席致度候間此
   段御届申上候也
       尋常三年生
             酒井なを
    明治三十三年二月廿三日
   山形市第二區小學校
             御中
 ****

 このなかに※の註記をつけたところがあるが、これは次のような理由から私のつけたものである。
②(※1)「座」
 この字の「土」の上の「人人」が原文では「口人」となっている。この口のついた漢字は辞書にはあったが、パソコンでは印刷できなかった。そこでやむを得ず現在の「座」をここでは使ったものである。
➄(※2)「衣」
 こう書いてあるように見えるのだが、そう読むと意味が通じなくなる。この字はなくとも意味が通じるので、書き誤った字を上から×を書いて消しただけなのかもしれない。あるいは、間違って「衣」と「キモノ=着物」を重複して書いてしまったのかもしれない。
⑦(※3)「バ」
 単に「ソ」の誤字に「×」をして、その下に正しく「ソ」を書いただけなのかもしれないが、どうだろうか。
⑨(※4)「、し」
 前頁⑧の讀本を借用する文の五行目のなかの「し」と同じ文字なので、「し」でいいと思われるが、文意からしてこれでいいのか、よくわからない。
⑱(※5)禾偏に公のつくりの字
 原文にあるこのような字は存在しないので、これは「私」という漢字の書き誤りと思われ、ここではそう書いておいた。
 これ以外のところは大体こんなものだと思うのだが、どうだろうか。何しろ悪筆の私の血筋のものが書いたものだから字が上手とは決して言えず、読みにくかったとは思うのだが。
 以上の私の読み方に誤りがあれば、コメントででもお教え願いたい。

 さて、それではこの「作文」帖なる小冊子はそもそも何者だったのか。次回(2月11日掲載予定)はそれを考えてみることにする。
 
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プロフィール

酒井惇一

Author:酒井惇一
元・東北大学農学部教授
元・東京農業大学生物産業学部教授
現・東北大学名誉教授

 本稿は、昭和初期から現在までの4分の3世紀にわたる東北の農業・農村の変化の過程を、私が農家の子どもとして体験し、考えたこと、また農業経営研究者となってからの調査研究で見、聞き、感じたことを中心に、記録したものである。

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